「うつ」という言葉がさす意味は非常に広く、人によりイメージする概念は違っています。
例えば、初診の際に「うつ状態」と言われる事がありますが、これは症状の状態像を指す言葉であって病名ではありません。
「うつ病」と言われた時でも、診断に用いる診断基準により、いくつもの種類に分類でき、有効な治療法も違います。
うつ病の種類を「古典的分類」で分類する。
古くからある考え方で、うつ病の種類を発症した原因から分類するものです。大きく分けて以下の3つの種類があります。
心因性うつ病
うつ病は、家族との死別や仕事上のストレスなど、何かとても大きな負荷が心にかかることによって発症したと考えられることが多いと思います。
心因性うつ病は、まさに心理的な要因が中心的な理由になりうつ病を発症した場合をさします。
心因性うつ病の場合、うつの症状は軽症であることが多いものの、薬が効きにくく慢性化する場合があります。
外因性うつ病
外因性うつ病は、うつ状態の原因が、脳の病気や身体的な病気、または薬の副作用など、身体的または外的要因にあるうつ病をいいます。
うつ状態を引き起こす脳の病気は、脳腫瘍、脳血管障害、パーキンソン病、てんかん等があり、身体的な病気は、がん、糖尿病、甲状腺、更年期障害 、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなどの膠原病、ウイルス感染症等があります。
内因性うつ病
内因性うつ病は、うつ病の種類の中でも一番典型的なうつ病で、心理的および外的理由がないのに自然に発症するうつ病を指します。
発症の前にストレスがまったくない場合もあれば、ストレスがきっかけとなることもあります。
心因性うつ病は、中心的な理由がストレスにあるので、ストレスを受ける環境から離れれば、症状は良くなるんだけど、内因性うつ病の場合は、ストレス環境から離れても、どんどん悪くなり、一番悪いところまで行って、その後改善して治るようなうつ病を言うんだ。
あと、最近よく聞く「新型うつ病」っていうのはどんなうつ病なの?
基本的にはうつ状態なんだけど、楽しいことがあるとうれしくなったり、仕事は無理だけど趣味には意欲がでるなど、気分反応性が見られるうつ病のことを指し、内因性うつ病とは、ある意味、正反対なうつ病という印象だな。
特に薬で治りやすいうつ病。
うつ病の種類を「DSM」で分類する。
現在多くの国で採用している有名な診断基準として、アメリカ精神医学会が定めたDSM(精神障害の診断と統計の手引き)があります。
最新版はDSM-5です。うつ病の種類については、うつになった原因より、うつの症状に注目して分類するのが特徴です。
抑うつ障害(Depressive Disorders)という大きなくくりの中に、それぞれの特徴別に分類がされており、一般的にいう「大うつ病性障害」をはじめ、破壊的気分調整不全障害、持続性抑うつ障害、月経前不快障害等があります。
名称 | 内容 |
---|---|
大うつ病性障害 | 抑うつや意欲低下など、いわゆるうつ病と言われる症状 |
破壊的気分調整不全障害 | 1年以上続く児童のいらいらや、かんしゃく等 |
持続性抑うつ障害 | 2年以上ほとんど毎日続く抑うつ状態等 |
月経前不快障害 | 月経前後の気分変動等が過去1年間の月経周期と合致 |
その他、楽しい出来事があった時には気分が改善する「非定型の特徴を伴う」(いわゆる新型うつ病等と言われるようなもの)、幻覚や妄想といった「精神病性の特徴を伴う」、特定の季節(主に冬や春)と規則的な関係がある「季節性を伴う」等があります。
うつ病の種類を「ICD」で分類する。
DSMと同じようなものに、ICD(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)があり、これは精神疾患だけではなく、その他の診療科すべての病気について記載されているものです。
ICDは、世界保健機関(WHO)によって作成されたもので、最新版はICD-11となります。
DSMと同様に、うつ病の種類については、症状やその重症度、特徴等で分類しています。
日本における障害年金の申請の際に必要となる診断書も、ICDの疾病コードを記入することになっています。
ICD-10では、「Depressive Disorder」を「うつ病性障害」と訳していましたが、ICD-11では「抑うつ症」となりました。
まとめ
いわゆる、うつ病と言っても、それは我々が勝手に、こういう病気だと分類したものにすぎず、その分類の指標によっては、うつ病と診断されたり、されなかったりします。
また、性同一性障害のように、その時代や社会背景によっても、それが精神病とされたり、されなかったりするものもあります。
本当のところ「うつ病」という病気がどんなものであるかは、誰にもわからないため、統一の基準を設けて診断したにすぎません。
DSMやICDは、症状をメインに捉えますが、古典的分類の「原因」に着目する面は、有効な治療法を検討する際に、大切な視点になると感じます。