ふだんの生活の中で、ちょっとした不調は誰でも感じます。しかし、その生活をそのまま続けると、中にはうつ病を発症し、徐々に悪化していくことも珍しくありません。
うつ病のきっかけや、うつ病になる一歩手前の状態から、少しずつ悪化していく様子について、具体的な生活の場面を例に見ていきます。
体の症状と心の症状について、色分けしています。
うつ病になるきっかけや、症状が出始める頃
Aさん・女性(30歳)は、夫と居酒屋を経営していて、小学生の息子と3人で暮らしています。
最近は、新型コロナの影響もあり、お店の経営は思わしくありません。夫婦げんかも絶えずにストレスも高まります。それでも、子供が寝静まったあとに、たまに好きなドラマを見るのがささやかな楽しみでした。
そんな中、息子の学校から「遊具から落ちてケガをした」との連絡がありました。大事には至りませんでしたが、Aさんにはショックなできごとでした。
ある日の朝、体のだるさを感じ検温すると37度 ありました。少しお腹もくだしていたため、風邪かなと思い市販の風邪薬を飲み、この日はお店を休みました。
それから数日が過ぎましたが、微熱はさがりませんでした。ただ、これといった他の症状はないので、家で事務作業をしていましたが、なかなか集中できずミスばかりで、仕事がはかどりません。
こちらが不調でも、息子はお構いなしに大騒ぎで、家の中を走り回ります。いつもは大して気にならないその音が、今日はとても気になり、ついに手をあげてしまいました。
こんな日は早めに寝ようとベッドに横になりましたが、心臓がドキドキしてなかなか寝付けませんでした。
今の診断基準とは若干違うけど、うつのタイプには、以下の3つの形があるよ。
- 心因性 心理的なストレスきっかけでなるうつ
- 内因性 もともとの素因にストレス等が重なった時のうつ
- 身体因性 甲状腺の病気や脳梗塞などでおこるうつ
うつ病の症状がだんだん進んでいく頃
お店はというと、少しずつお客さんが戻ってきて、経営もなんとか見通しがたちました。それなのに、なんだか心が晴れません。
帰宅後、たくさん洗い物があるのにやる気が起きません。寝つきも悪く、ようやく寝れたと思っても3時ごろにふと目が覚めてしまいます。
こんな調子ですから、なんだか気分も落ちてきて、ずっとベットにうずくまっていたい気分です。
最近では、好きだったドラマもあまり見なくなりました。
ただ、うつ病らしきものの一歩手前の状態かな。
それと同じで、ストレスがなくなっても、状態によっては回復に時間がかかるね。
「心」といっても、それは「脳内」の不具合なので、基本的に体の病気と変わらないんだ。
精神科への受診
その後のAさんは、前にも増して眠れなくなり、ようやく近くのメンタルクリニックを受診しました。はじめに微熱の症状が出始めてから、2ヶ月ほど経っていました。
Aさんは、これまでの経過を話しました。医師は、今の状態をはじめ、治療が必要であることや、その治療方針などを話してくれました。薬は、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬が処方されました。
受診時には、症状だけでなく、副作用の様子も伝えることが大切だね。
薬の副作用は、飲み続けることでおさまっていくことも多いです。